Enterprise2.0を支えるQEDWiki

マッシュアップは個人利用に止まらない。今後、企業内でマッシュアップのビジネス利用が伸びることを狙って、IBMはアルファーワークス(alphaWorks)・サービスとしてQEDWiki(Quick and Easily Done Wiki)と呼ばれるマッシュアップ・プラットフォームを開発した。いわゆるエンタープライズ2.0である。

QEDWikiは、特別なソフトウェアのインストールを要しない。ブラウザベース(インターネットエクスプローラ又はファイアーフォックス)でマッシュアップができるウィキ・フレームワークである。マイクロソフトのポップフライ同様に、プログラミングの知識がなくても簡単なドラッグ&ドロップの操作でマッシュアップができることを売りにしている。

マッシュアップ・プラットフォームとしてのQEDWikiには、3つの特徴があると説明されている。一つは、プログラミングの知識がなくても、ビジネス上の課題を解決するために、簡単にデータやウィジェットを持ち寄ったりすることができるというアセンブリーな性格を持っているという点。IBMのアルファーワークス・マッシュアップハブ(MashupHub)のレポジトリ内にあるウィジェットを利用することもできるし、自分で新たなウィジェットを作成することも容易にできる。2つ目は、全く異なるデータを関係づけて、リッチでインタラクティブなアプリケーションを作れること、そして3つ目は、他のユーザーからの利用によりマッシュアップを促進することである。

例えば、小売店舗の経営者が、各商品の売り上げとその日の天候との関係を分析したいと思えば、各商品の売り上げデータと過去の天気情報とをQEDWikiに呼び込み、相互の関係の有無について視覚的に判断することが容易になる。QEDWikiを利用することで、生産性や効率性を上げることができ、タイムリーな経営判断にも役立つという訳である。

マッシュアップは、グーグルマップと組み合わせた事例がよく紹介されるために、コンシューマー利用での利便性がクローズアップされる場合が多い。しかし、QEDWikiが狙っているように、マッシュアップは、ビジネス利用としても有用である。全く異なる情報どうしを並べることで、相互の関連性が「見える化」され、経営改善につなげる。これは、エンタープライズ分野では、SOA(サービス・オリエンテッド・アーキテクチャ)と呼ばれるソフトウェアをサービスと見なして関係づけるテクノロジーと同様の思想を持つものである。その意味で、QEDWikiは、ウェブ2.0とSOAとをつなぐ技術であると言ってもいい。企業内のIT部門以外のスタッフでも、容易にマッシュアップを構築し、業務分析に利用できるということは、現場での生産性を向上させるツールになるだろう。

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